Doctor's Network

"夢をつなぐ" Doctor's Network

N

名前 N
所属 市中病院
診療科 リハビリテーション科
障害の内容 先天性進行性筋疾患
障害の発生時期 医学部入学以前

これまでの経緯

【病気が診断されたころ】

12歳の時にポンペ病(糖原病Ⅱ型)と確定診断された。下肢筋力の低下により、階段昇降が困難になるなど日常生活に支障が出はじめた。

【医師を志したころ】

中学生で自転車に乗れなくなり、床から立ち上がれなくなった。将来の仕事を考えたときに、両親から「医師はどうか」と勧められた。「今までお世話になった人たちに恩返しがしたい」という気持ちもあり、医学部を目指すことにした。これから自分の病状がどれほど進行するのか、医師になるまでに自分の体力が保てるのかという不安は常にあった。

【医学部受験】

高校はエレベーターのある進学校を選んだ。自己紹介の時に、クラスメイトに病気について説明し、助けてもらいたいことを伝えるようにした。生活面では転倒が増え、横断歩道を青信号の間に渡りきるのが難しくなった。

高校3年の夏、ポンペ病の治療薬が実用化され、歩行が安定し、床から立つことも可能になった。医学部受験は、他の学生と同じ条件で臨むことができた。

【医学部入学後】

入学後すぐに学生課と面談し、長距離歩行や頻回の立ち座りが困難であること、筋疲労が蓄積すると病状が進行するため適宜休憩が必要であることを説明した。自動車免許を取得し、講義棟近くに身障者駐車場を利用させていただいた。

2年生の解剖実習では、事前に先輩方に解剖実習の様子を聞き、学生課の方に実際の解剖室の部屋を案内していただき、座って解剖実習に参加できると判断した。

4人グループの中で、解剖の手引き書を片手に、次に何をしたら何の血管、神経が見えてくるはずだと、ナビゲートする係に専念した。友人たちは、私が力仕事を行えないことを謝った際、「そんなことは気にしなくていい」、「自分は力仕事の方が向いているから、教科書を読んでくれるのは助かる」と言ってくれた。

5年生からの病棟実習は、全診療科を2~4週間ずつローテーションするため、院内移動用に電動車椅子を購入した。

実習開始前には、自分の病状と必要な配慮をまとめた書面を作成し、学生課を通じて全診療科に共有していただいた。主治医にも意見書を作成していただいた。

各診療科に移る際には、数日前に教授へメールを送り、車椅子で実習に参加する旨をお伝えした。手術室では、滅菌済みの手動車椅子を手術室専用に置いていただいた。救急の当直は短時間のみ参加し、夜間は自宅に戻れるよう配慮していただいた。

【初期研修】

初期研修は地元の大学病院にマッチングした。電動車椅子で全ての研修を修了した。救急科は、3次救急の重傷患者に対応する場面が多く、ストレッチャーに近づくことも難しく、ICUでの診察も十分に行えなかった。研修センターに相談し、途中から2次救急の関連病院へ異動させていただいた。そこで点滴準備、採血、短時間の立位での診察など、可能な範囲で研修を続けることができた。

【リハビリテーション科医になるまで】

初期研修中に病状が進行したため、すぐに専門医を目指すのではなく、仕事と治療の両立が可能な働き方を模索し病、院勤務から離れた。その後、新薬の治験が始まり、体調が回復したことで、再び病院勤務に戻りたいという思いが強くなった。リハビリテーション科を選んだのは、持病の診断時からリハビリテーションに通っており身近だったことと、自分の経験を活かすという医師を志した当初の思いに最も近い診療科と感じたからだった。

地域の中核病院で、週4日の時短勤務からキャリアを再スタートし、現在はリハビリテーション科専門医取得を目指している。

(※投稿者注:ポンペ病は難病だが、医学の発展により、早期発見・早期治療により筋力を維持できる病気になった。誤診・診断の遅れなく患者が治療に繋がるよう、広くこの病気を知っていただきたく、あえて病名を公表させていただいた。)

医師として働く上での工夫や配慮

病院内はバリアフリーのため、移動やトイレで不便を感じることはない。運動不足予防のため、電動スタンディングデスクを使用し、立位でカルテ入力をしている。筋力テストやベッド上の診察は、近くの療法士や看護師に声をかけ一緒に診察するようにしている。

医師を目指す方や医師を続けることに不安を感じている方へのメッセージ

医師には多様な働き方があり、それぞれのライフステージ、体調に合った環境を選ぶことができます。私にとって最も大変だったことは、障害そのものではなく、周囲に自分を知ってもらい、無理なく社会参加できるよう関係者と丁寧にコミュニケーションを重ねることでした。前例のない対応をお願いすることは、相手に余分な手間をかけてしまうため、当初は心苦しさもありました。

しかし、このようなコミュニケーションは、障害の有無にかかわらず、社会で生きていく上で必要なスキルのひとつだと感じています。

自分にできないこと、配慮していただきたいことを、自分の中で明確化し、相手の状況にも配慮しながら、最善策を模索すること。そして、感謝の気持ちを伝えること。これらを意識しながら日々仕事をしています。今では、この道を選んで良かったと思っています。

この記事を読む皆様も、ご自身の身体を大切にしながら、患者様のために力を発揮できる環境・職場に出会えることを心より願っています。